レジメンの切り替えおよび簡素化の管理 MANAGING REGIMEN SWITCH &
SIMPLIFICATION

2剤レジメンの選択肢

スライド画面

前述したように、一部の2剤レジメンは、3剤レジメンで治療を開始しウイルス学的抑制を達成した患者において、ウイルス学的抑制の維持に有効であることが示されている。したがって、DHHSおよびEACSのガイドラインは、2剤レジメンへの切り替えの選択肢をいくつか推奨している。これらの推奨は、両剤ともに活性を有し、慢性HBV重感染のない患者であることが前提である。

次に、2剤レジメンに切り替えたウイルス学的抑制が得られている患者のアウトカムを評価した、最近のいくつかの試験を取り上げる。

目次へ

ART治療歴のある患者コホートにおける2剤および3剤レジメンのウイルス学的アウトカムは類似

スライド画面

米国の観察研究データベースであるOPERA®を利用して、2010年1月1日から2016年6月30日の間に、OPERA®に記録された最初の来院後に2剤レジメン(2-DR)または3剤レジメン(3-DR)を開始し、30日以上投与を継続したART治療歴のある患者を特定した。研究期間中に2剤レジメン(n=1,337、13%)または3剤レジメン(n=8,853、87%)に切り替えた治療歴のある患者10,190例(HIV陽性患者計79,803例の中から)を特定した。

最もよく使用されていた2-DR(55%)は、PIとINSTIの併用(DRV+RAL:27.7 %、DRV+DTG:16.2%)であった。最もよく使用されていた3-DRは、主要な3つのARTクラスの薬剤とNRTI 2剤との併用で、それぞれ使用していた患者の割合は同程度であった(EFV/FTC/TDF:14.5%、DRV/FTC/TDF:11.5%)。

ウイルス血症が認められ切り替えた患者において、追跡調査期間中にウイルス学的抑制が得られた割合は、2-DR群と3-DR群で同程度であった(61% vs 67%、調整(aHR) 1.00、95%CI 0.88~1.13)。ウイルス血症がみられた患者が追跡調査期間中にウイルス学的抑制を達成後、2-DR群の13%と3-DR群の15%がウイルス学的失敗を経験した。

切り替え時にウイルス学的抑制が得られていた患者では、2-DR群と3-DR群の追跡調査期間中のウイルス学的失敗のリスクに統計学的差異は認められなかった(10% vs 11%、aHR 1.15、95%CI 0.90~1.48)。

2-DRを開始した患者は年齢がより高く、併存疾患がより多く、CD4+細胞数がより少なく、ベースライン時にエイズ指標疾患の既往歴がある割合がより高かった。このことから、医師は複雑な症例に対しては、2DRを選択する傾向があることが示唆された。

ART:抗レトロウイルス療法、CI:信頼区間、DR:薬剤レジメン、HR:ハザード比、VL:ウイルス量

目次へ

SWORD-1および2試験:これまでのARTでウイルス学的抑制が得られている患者におけるDTG+RPV の2剤レジメンへの切り替え

スライド画面

SWORD-1および2試験では、治療歴のある患者において、ウイルス量が検出限界値未満の状態で3剤または4剤レジメンからドルテグラビル(DTG)+リルピビリン(RPV)へ切り替えた場合にウイルス学的抑制が維持されるかについて評価した。SWORD-1、SWORD-2試験は同じ多施設共同無作為化試験であり、南・北アメリカ、欧州、ロシアおよびアジアの患者を組み入れた。両試験には、1年以上(中央値4年)にわたりHIV-1 RNA量が検出限界値未満(50コピー/mL未満)に維持されており、標準的なARTを受けており、ウイルス学的失敗歴や薬剤耐性の根拠がないHIV-1感染者を1,024例組み入れた。

これらの非盲検試験の患者を、DTG+RPVを1日1回投与する2剤レジメン切り替え群、または現在のレジメン継続群に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は、48週目においてもウイルス量が検出限界値未満の状態で維持されている患者の割合とした。

ART:抗レトロウイルス療法、DTG:ドルテグラビル、HBV:B型肝炎ウイルス、ITT-E:治療の意図、RPV:リルピビリン、TDF:テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、VF:ウイルス学的失敗

目次へ

SWORD-1および2試験:投与48週目時点、DTG+RPVへの切り替えはベースラインARTの継続に対して非劣性

スライド画面

両群ともに大部分の患者がウイルス学的抑制を維持した。

DTG+RPV群の95%と現在のレジメン継続群の95%が、48週目のHIV-1 RNA量が50コピー/mL未満であり、非劣性が示された。ウイルス学的失敗はほとんど認められず、2剤療法群で1%未満、現在のレジメン継続群で1%であった。

100週目のウイルス学的反応率(FDAスナップショットによる)は、DTG+RPV投与を継続したDTG+RPV群で89%であったのに対し、最初にベースラインARTを継続し、52週目にDTG+RPVに切り替えた群では93%であった。この時点でウイルス学的中止が1%認められ、投与期間中に発現したNNRTI耐性が10例中3例に認められ、すべて早期切り替え群であった。

ART:抗レトロウイルス療法、DTG:ドルテグラビル、RPV:リルピビリン、VF:ウイルス学的失敗

目次へ

SWORD-1および2試験:これまでのARTでウイルス学的抑制が得られている患者におけるDTG+RPVへの切り替え:安全性アウトカム

スライド画面

SWORD-1および2試験で検討されたレジメンは概ね安全で忍容性も良好であり、予期されない薬剤関連有害事象(AE)はみられなかった。重度のAE(grade 3または4)の発現率に群間差は認められなかったが、DTG+RPV群では軽度から中等度(grade 1~2)の発現がより多く認められた(17% vs 2%)。治験責任医師は、非盲検試験で薬剤を切り替えた患者は、あらゆる症状を新しい薬剤を原因とすることが多いが、同じ治療レジメンを継続した患者は、よくみられる軽度の症状を敢えて報告しない可能性があるという理論を立てた(CROI 2017のpress conference)。治療中止は、2剤併用療法群の方が数値的に高かった(3% vs 1%)。

DTG+RPVに切り替えた場合、骨代謝バイオマーカーに有益な影響がもたらされた。これは、多くの患者がTDFの投与を中止したことが理由であると考えられる。切り替えによる血中脂質への影響は認められなかった。

AE:有害事象、ART:抗レトロウイルス療法、DTG:ドルテグラビル、RPV:リルピビリン

目次へ

TANGO試験:DTG/3TCへの切り替え vs TAFベースの3剤レジメンを継続

スライド画面

TANGO試験は、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩(TAF)ベースの3剤または4剤レジメン投与を受け、6ヵ月以上ウイルス学的抑制が得られているHIV-1成人感染患者をドルテグラビル(DTG)+ラミブジン(3TC)の固定用量配合剤へ切り替えた場合の有効性と安全性を評価する第III相非劣性試験である。

ウイルス学的失敗歴のある患者、NRTIおよびINSTI耐性が認められる患者、HBVとの重感染を有する患者、HCV感染に対する治療の必要性が予測される患者は除外した。組み入れ時のベースラインthird agent(PI、INSTIまたはNNRTI)で患者を層別化した。

主要評価項目は、48週目のFDAスナップショット解析によるウイルス学的失敗とした。副次評価項目は安全性であった。

この試験結果に基づき、米国FDAは、治療失敗歴がなく、DTGおよび3TCに対する耐性が認められない、安定したARVレジメンを受け、ウイルス学的抑制(HIV-1 RNA量50コピー/mL未満)が得られている成人感染患者に対して、DTG/3TCの適応拡大を承認した。

3TC:ラミブジン、ART:抗レトロウイルス療法、BL:ベースライン、DTG:ドルテグラビル、FTC:エムトリシタビン、HBV:B型肝炎ウイルス、HCV:C型肝炎ウイルス、ITT-E:治療の意図、TAF:テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、TDF:テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、VF:ウイルス学的失敗

目次へ

TANGO試験:48週目の結果

スライド画面

両投与群の患者集団は同様であった。組み入れ時に大部分(79%)がthird-agentとしてINSTIを使用していた(66%がエルテグラビル/cを使用)。

全体として、この試験の48週目の結果では、ウイルス学的抑制が得られている患者において、ARVの2剤レジメンであるDTG/3TCへの切り替えは、3剤または4剤のTAFベースのレジメンの継続に対して非劣性であることが示された。

48週目に、DTG/3TC群の1/369例およびTAFベースのレジメン群の2/372例がHIV-1ウイルス量50コピー/mL以上であった(調整した差-0.3%、95%CI -1.2~0.7%)。

いずれの群においても、ウイルス学的失敗時に投与期間中の耐性の発現は認められなかった。

AEに群間差はなかった。

Grade 2~5の薬剤関連AEは、DTG/3TC群(5%)の方がTAFベースのレジメン群(<1%)より多く、AEにより試験を中止した患者もDTG/3TC群の方が多かった(3.5% vs 0.5%)。DTG/3TC群で、最もよくみられた中止に至ったAEは、不安、不眠症、体重増加および疲労感であった。

両群の体重増加量の平均値(0.8 kg)、および体重増加がみられた頻度は同程度であった。

DTG/3TC群では、血清クレアチニン値の有意な増加(6.67 μmol/L vs 2.19μmol/L、P<0.001)および血清クレアチニン値から算出したeGFRの有意な減少(-7.7mL/min/1.73㎡ vs 3.0mL/min/1.73㎡ 、P<0.001)がみられたが、腎機能のバイオマーカーの変化は軽微であり、群間差はなかった。

脂質プロファイルの改善はDTG/3TCへ切り替えた場合に認められ、DTG/3TCへ切り替え後48週目には総コレステロール、LDLコレステロールおよびトリグリセリドの有意な減少がみられた。

3TC:ラミブジン、AE:有害事象、ART:抗レトロウイルス療法、BL:ベースライン、DTG:ドルテグラビル、ITT-E:治療の意図、NI:非劣性、TAF:テノホビルアラフェナミドフマル酸塩

目次へ