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2022年02月17日

ブースターワクチン接種はHIV感染者を重症COVID-19から守る
Booster vaccine doses protect people with HIV against severe COVID-19

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Dr Jing Sun (bottom left) at CROI 2022.

今週、CROI 2022で報告された米国の大規模な研究によると、追加のワクチン接種やブースターワクチン接種は、HIV感染者や免疫機能不全のある人々の重篤なCOVID-19の予防に有効であることが分かった。

HIV感染者―特にCD4数が200未満の人― では反応が弱くなるCOVIDワクチンがあることがいくつかの試験で明らかになっている。米国とヨーロッパの保健機関は、HIV感染者が免疫不全である場合には追加のワクチン接種を受けることを勧めている。この追加接種は、弱くなっていく免疫反応を補充する(「ブースター」)よりも、むしろワクチン接種に対する反応を最大限に引き出すのを可能にすることを意図している。

本学会で、BaltimoreのJohns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのJing Sun医師は、ワクチン接種を完了した後に追加接種またはブースター 接種を受けていた人のブレークスルー感染とCOVID-19の重症例について報告した。

試験対象集団はワクチン接種を完了した614,750名で、このうち174,042名がブースター接種を受けていた。この中にはHIV感染、がん、自己免疫疾患のある人、固形臓器や骨髄の移植を受けた人など、免疫機能不全のある人が20%含まれていた。

ブースター接種の有効性は、免疫機能不全のない人の方が高かった。それでも、免疫機能不全のある人のブレークスルーCOVID感染を調べたところ、ワクチン接種完了から9ヵ月後の時点で、ブースター接種を受けていた人は受けていなかった人より、ブレークスルー感染のリスクが44%低いことが分かった。

ブースター接種によって、免疫機能不全のある人の入院、またはCOVID-19による死亡リスクも約80%減少した。

会議で発表された別の研究で、イタリアのNational Institute for Infectious DiseasesのAndrea Antinori医師は、CD4数が少ない人のワクチン接種後の免疫反応をより詳しく調べた。

彼の研究グループは、CD4数200未満のHIV感染者では、ワクチン接種が完了してから中央値で175日後における抗体反応が、CD4数500超のHIV感染者に比べて有意に低下していたことを見出した。T細胞を介する免疫も最適ではなかった。

次に、AIDSの診断歴があるか、またはCD4数が少なかったので抗レトロウイルス療法を受けていた216名を対象に、PfizerまたはModernaワクチンの3回目の接種から15日後の抗体とT細胞の反応について調べた。年齢およびCD4数の最低値やウイルス量が検出可能であるか等のHIVに関連した因子について調整した多変量解析で、現在CD4数が200未満の人の3回目のワクチン接種に反応しないリスクは有意に高くはなかったことが明らかになった。

しかし、会議の開会式で、ワクチン研究者のDan Barouch教授は、「ブーストは明らかに有用で 、現在議論の中心となっているが、最優先事項は米国でも世界でも、ワクチン未接種の人に最初のワクチンを引き続き提供することであるべきだ」と述べた。

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