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2021年11月08日

SARS-CoV-2排出が長期間持続した免疫不全患者の症例報告
Case report of long-lasting SARS-CoV-2 shedding in immunocompromised patient

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Dr Irfaan Maan presenting to EACS 2021.

重度の免疫抑制状態にあるHIV感染者は、臨床症状を伴わずにSARS-CoV-2(COVID-19を引き起こすウイルス)を長期間排出する可能性があることが、EACS2021で発表された。

University College LondonのIrfaan Maan医師は、HIVに感染していて、2020年半ばにB細胞リンパ腫(非ホジキンリンパ腫の1種)と診断された28歳の女性の症例について報告した。CD4数は30、ウイルス量は354,814コピー/mLであった。彼女の抗レトロウイルス薬のアドヒアランスは、長い間、最適ではなかった。また、リンパ腫の診断は、10ヵ月間治療を中断した後であった。

治療を再開するにあたり、彼女は抗レトロウイルス療法を再開し、化学療法を開始した。どちらも長期的結果は良好であった。しかし、彼女のCD4数は数ヵ月間少ない状態で、PCR検査でSARS-CoV-2陽性となった。

珍しいことに、彼女は15日目の検査でも陽性で、22日目と37日目も陽性であり、最初に陽性となった検査から164日後まで、PCRおよび転写増幅法(TMA)検査で陽性判定が継続した。64日目の抗体検査は陰性で、感染に対する免疫反応がないことが示唆された。検査が陽性であった期間を通して、COVID-19の症状はなかった。

長引くウイルスの排出は、以前、重度の免疫不全の人々で報告されていて、その中にもHIV感染者が1名いた。しかし、この28歳の女性の症例で、ウイルスの排出が他の人を感染させるリスクとなるのに十分であるかどうかははっきりせず、同じ家に住む家族2名は感染しなかった。

この患者は、5ヵ月を超える自主隔離を余儀なくされ、そのことによるかなりの心理社会的影響を及ぼした。社会的接触がないのを寂しく思い、気分の落ち込みと状況に対する苛立ちを経験し、気分の落ち込みと自分の置かれた状況の見通しを改善するために臨床医と臨床心理学者の支援を必要とした。

この症例は、免疫抑制状態の人のSARS-CoV-2とCOVID-19について、ワクチン接種に対する反応だけではなく、もっと理解する必要性を明確に示している。

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