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2022年08月02日

バルセロナの女性が治療を受けずに15年以上にわたりHIVを制御
Barcelona woman controls HIV for over 15 years without treatment

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Dr Núria Climent at AIDS 2022.

バルセロナのある女性は、抗レトロウイルス療法 中止後15年以上にわたってHIVウイルス量を検出限界値未満に維持している。彼女の場合、HIVは体内から完全に排除されていないため、厳密な意味では治癒したとは言えないが、抗レトロウイルス療法を受けずに長期寛解状態にあるとみなされる。これは「機能的治癒」と呼ばれることもある。

この女性の症例報告は、カナダのMontrealおよびオンラインにて今週開催されている AIDS 2022で発表された。

抗レトロウイルス療法は、治療を継続している限り体内のHIVウイルス量を抑制し続けることができる。しかし、HIVは自らの遺伝子情報(プロウイルスとして知られる)を宿主であるヒト細胞のDNAの中に組み込んで、抗レトロウイルス薬が到達不能かつ通常は免疫系にも認識されないウイルスリザーバーを構築する。

HIVが本当に治癒したと考えられている一握りの人たちは、HIVの免疫細胞への侵入を阻害するまれな変異-CCR5-デルタ-32として知られる-を有するドナーから、がん治療のために幹細胞移植を受けた。

上述の女性は「バルセロナ患者」と呼ばれる新たな症例で、59歳のときにHIV感染急性期と診断された。感染急性期の人たちのウイルスリザーバーは比較的小さいため、機能的治癒の可能性が高くなる。ベースライン時の彼女のウイルス量は約70,000で、CD4 T細胞数はまだ多かった(約800)。

この女性は、免疫調節療法を検討する小規模臨床試験に参加した。まず、ロピナビル/リトナビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、ラミブジンによる標準的抗レトロウイルスレジメンを9カ月間、シクロスポリンA(免疫抑制薬)による短期治療を受けた。

その後、短期間の計画的治療中断があったが、この中断期間中に顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(白血球の産生を促進する薬剤)とインターフェロンα(自然免疫または非特異的免疫を調節するサイトカイン)の投与を受けた。その後、抗レトロウイルス療法と短期間のインターロイキン-2(T細胞とナチュラルキラー細胞を活性化するサイトカイン)の投与を再開した。

8週間後、ウイルス量が抑制されていたため、解析のために再度治療を中断した。しかし、予想に反してHIVのリバウンドはみられなかった。ウイルス量が検出限界値未満に抑制された状態だっただけではなく、ウイルスリザーバーの縮小も認められた。

研究者らが、この女性の珍しい反応の解明を期待しながら、遺伝子解析を実施したところ、ウイルスの自然制御に関連する「古典的な遺伝的要因を彼女は持っていなかった」ことが判明した。さらに、ナチュラルキラー細胞とCD8キラーT細胞がHIVの制御に重要な役割を果たしていたこと、これらの細胞の特異型の濃度が、典型的なHIV進行がみられる未治療患者よりも高かったという所見を得た。

この女性は治療後にウイルス量が制御された例外的なケースであり、彼女が受けた実験的レジメンは広範な使用には適さないと考えられる。しかし、この症例は、長期的寛解に向けてより広範に適用可能な戦略の開発についての手がかりを研究者に提供する可能性がある。

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This material is based on an original copyright publication by NAM Publications, an independent HIV information charity based in the UK. Permission for this adaptation has been granted by NAM. The original publication can be viewed at www.aidsmap.com. NAM cannot be held responsible for the accuracy of the adaptation nor the local relevance of the text.

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