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2022年08月10日

アフリカの試験的な被害低減プログラムが進展を示す
Pilot harm reduction programmes in Africa show progress

写真
The session's community panel at AIDS 2022. Photo by Oğuzhan Nuh

AIDS 2022で、アフリカの注射薬物使用者を対象とした3つの試験的な被害低減プログラムの状況が報告された。

注射薬物使用者はHIVの影響を受ける割合が高く、世界の新規HIV感染者全体の9%を占めている。2020年、UN Office on Drugs and Crimeは、アフリカには950,000名の注射薬物使用者がおり、そのうちHIVとC型肝炎の有病率の割合はそれぞれ11%と19%であると推定した。

被害低減の2つの基本的なサービスは、注射針・注射器のプログラムと、オピオイド代替療法(依存を軽減し、離脱症状を防ぐための薬物療法)である。サービスの提供形態には、ドロップインセンター、移動型アウトリーチ、クリニック、ピア主導型アウトリーチ、地域主導型サービスなどがある。

制限的な法律や規制は、有病率に関する欠測データとともに、政策立案やサービス提供を妨げている。2020年時点で、この地域で薬物所持を許可している国はなく、薬物使用者に対する差別を禁止する法律が制定されている国は2ヵ国のみであった。

モザンビーク保健省のMaria Simbine氏は、試験的な被害低減プログラムの1つについて説明した。モザンビークのHIV有病率は、一般集団では13%であるのに対し、注射薬物使用者では31%である。このプログラムでは、地域の機関で注射針と注射器、ナロキソン、予防医療サービスを提供し、オピオイド依存症治療のためのクリニック紹介も行っている。Simbine氏は、人々が直面している主な課題の1つは犯罪化であると指摘した。逮捕されることで治療が中断されるためである。

ケニア保健省のMary Mugambi氏は、アフリカ大陸で最大規模の注射薬物使用者向けプログラムの概要を説明した。ケニアでは、注射薬物使用者は、国家戦略において重要な集団として優先されている。一般集団のHIV有病率が4.9%であるのに対し、注射薬物使用者のHIV有病率は18.7%である。注射針・注射器のプログラムが2010年に開始され、2014年には薬物治療が開始された。これまでに約10,000名が薬物治療に登録しており、平均継続率は70%を超えている。

FHI 360のChris Akolo医師は、ナイジェリアのプロジェクトから得られた知見を発表した。ナイジェリアでは、新規HIV感染者全体の9%が注射薬物使用者である。この集団に対する特徴的なサービスには、ドロップインセンター、地域薬局、ピアナビゲーターなどがある。2年間で、15,816名がHIV検査を受け、1,329名がHIV感染症と診断され、全員がHIV治療を開始した。約1,302名がHIV治療を継続しており、ウイルス抑制率は97%であった。別の注射薬物使用者2,841名は、曝露前感染予防(PrEP)を開始した。

すべてのプログラムにおいて、地域社会はサービスの利用者としてだけでなく、開発者や実施者としても関与していた。

Global FundのKate Thomson氏は、アフリカでは何らかの形で注射針・注射器のプログラムを実施しているのは10ヵ国のみであり、オピオイド代替療法サービスを実施しているのは8ヵ国のみであると指摘した。被害低減のためのサービスや政策の拡大には、地域社会のリーダーシップと意義ある関与が不可欠である。

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