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2023年10月30日

ヨーロッパのコホート研究で長時間作用型注射剤の治療が極めて有効
Long-acting injectable treatment highly effective in European cohort studies

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Andrey Mihaylov/Shutterstock.com.

長時間作用型のカボテグラビル(ボカブリア)+リルピビリン (リカムビス)は、HIVに対して初めての長時間作用型の注射による治療法である。欧州連合では2020年に、ウイルス量が抑制されている人の治療薬として承認された。EACS2023で発表されたコホート研究では、高い有効性が示された。

オランダの研究では、長時間作用型の注射用カボテグラビル+リルピビリンによる治療では、ウイルス量が200コピーを超えるリバウンドの発生率が上昇することはなかった。しかし、ウイルスリバウンドの5例を調べると、一方または両方の注射薬に対する高レベルの薬剤耐性の発現を観察し、将来の治療選択肢を著しく制限する可能性があった。

ATHENAコホートは、オランダでHIV診療の対象となっているほぼ全員を追跡した全国規模の研究である。2023年9月までに長時間作用型注射剤治療に切り替えたATHENAの参加者619名の転帰が会議で発表された。

治療失敗のリスクを評価するために、切り替えを行った人は切り替えを行わなかったコホートメンバー2名とマッチングさせた。注射剤治療に切り替えた群(0.9%)と対照群(1.8%)で、ウイルス学的失敗率に有意差はなかった。

University Medical Center UtrechtのAnnemarie Wensing医師は、5例のウイルス学的失敗について報告した。男性3名、女性1名、トランスジェンダー1名であった。全員が2ヵ月間隔で注射による治療を受けていた。

最も早いリバウンドは、切り替えから3ヵ月後に起こった。注射用カボテグラビル+リルピビリンが初めてヨーロッパで承認されたときに推奨されていた1ヵ月の経口による導入期間のなかった男性1名が、ウイルス量が830,000となるリバウンドを経験した。彼はリルピビリンに対して検出可能な耐性を有していた。

2番目の症例では、ウイルス量が最初に検出された測定で260の後、最終的に610,000までリバウンドした。この患者は、インテグラーゼ阻害薬とNNRTIに対して薬剤クラスを超えた耐性を獲得していた。

ウイルス学的リバウンドの各症例において、少なくとも1つの薬剤濃度が最適値以下であったことは判明したが、薬剤濃度と治療失敗の関係についてはさらなる調査が必要である。

研究者らは、肥満度の高さなど個人の特徴が治療効果に影響を与えた可能性があると述べている。しかし、全ての症例において、治療失敗は広範囲の交差耐性を引き起こし、将来の治療選択肢を失うだけでなく、治療を受けている人々とその医療チームにかなりの衝撃を与えた。

スイスのUniversity of ZurichのJessy Duran Ramirez氏は、注射による治療に切り替えた264名の転帰について報告した。

Swiss HIV Cohort研究の参加者のうち、切り替えた人は3%未満で、アンケート調査では経口治療への満足度は高く、注射間隔が2ヵ月になることで自由度が失われることへの懸念が示された。注射間隔を6ヵ月にできるなら、切り替えに関心を持つ人がより増える可能性が明らかになった。

注射による治療に切り替えた264名のうち8名が治療を中断した。2名は副作用を経験し、1名はリルピビリンの血中濃度が低く、4名は治療とは関係のない理由で中止し、1名はウイルス学的失敗のために中止した。

英国のBrightonでの研究では、長時間作用型注射剤治療の対象者全員が、治療を受けることの影響について医師と話し合った結果、経口治療からの切り替えを希望したわけではないことも判明した。適格性について検討した160名のうち、52名は不適格(主に耐性、ウイルス血症、薬物相互作用のため)、57名は治療の切り替えを拒否し、51名は長時間作用型注射剤治療を開始した。全員がウイルス抑制を維持している。

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