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2023年07月26日

ピタバスタチンはHIV感染者の心血管イベントリスクを低下させる
Pitavastatin lowers risk of cardiovascular events in people living with HIV

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Professor Steven Grinspoon at IAS 2023. Photo by Roger Pebody.

広く使用されているスタチン系薬剤を、日常的に処方されていないHIV感染者に投与した場合、心臓発作、脳卒中、その他の心血管イベントのリスクが軽減したことが、今週発表された研究で明らかになった。この所見は、スタチン系薬剤が主要な心血管イベントまたは関連する死亡の 5 件に 1 件を予防できる可能性があることを示唆している。

大規模な第III相試験であるREPRIEVEは、ピタバスタチンが主要な心血管イベントのリスクを35%低下させることが中間結果で示されたことを受け、予定を前倒して4月に中止された。Harvard Medical Schoolおよび同大付属Massachusetts General HospitalのSteven Grinspoon教授は、詳細な結果を IAS 2023 で発表し、同時に The New England Journal of Medicine誌で公表した。

HIV 感染者は循環器疾患リスクが高いことを示す研究が増えている。これは、効果的な抗レトロウイルス療法を行っても慢性炎症が持続すること、特定の抗レトロウイルス薬に副作用があること、喫煙など従来の危険因子を有する割合が高いことが原因と考えられる。

循環器疾患は、血中のコレステロールおよびトリグリセリドの上昇と関連する。スタチンは低比重リポタンパク質(LDL)、つまり「悪玉コレステロール」を低下させ、炎症を軽減することも知られている。スタチン系薬剤は一般集団において心血管イベントや死亡リスクを軽減することが示されているが、HIV感染者に対するスタチン系薬剤の利点はこれまで不明であった。

REPRIEVE 研究は 2015 年に登録が開始された。これまでに実施された最大の無作為化HIV試験であり、南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアの12ヵ国、100施設で実施されている。この研究には40~75歳までのHIV感染者7,769名が登録され、年齢中央値は50歳であった。参加者の約3分の1が女性で、黒人41%、白人35%、アジア人15%であった。

参加者は抗レトロウイルス療法を受けており、ほとんど(88%)がウイルス量は検出不能なレベルであった。大半が、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(47%) またはインテグラーゼ阻害剤 (26%)を含むレジメンを受けていた。参加者には循環器疾患の既往がなく、これまでにスタチン系薬剤を服用したことがなく、低~中等度の心血管リスクがあると評価された。

参加者は、1日1回経口ピタバスタチン(4 mg)またはプラセボ投与群に無作為に割り付けられた。5年間の追跡調査を通してアドヒアランスは非常に良好であると報告された。

LDL コレステロール値はベースラインでは同程度であったが、ピタバスタチン群では 30% 減少し、プラセボ群では変化がなかった。

主要心血管イベント(心臓発作や脳卒中など)の発生率は、ピタバスタチン群とプラセボ群でそれぞれ1,000人年当たり4.8と7.3であった。主要心血管イベントの発生率はピタバスタチン群で 35% 低く、一般集団の研究でみられた発生率よりも大きく減少した。

ピタバスタチンは全般的に安全で、忍容性も良好であった。副作用は一般集団の研究でみられたものと同様であり、予期せぬ安全性の懸念はなかった。

「この研究は、スタチン系薬剤が HIV 感染者の心血管の健康と生活の質を改善するための利用しやすく費用対効果の高い治療法となる可能性があることを示唆している」と、US National Heart, Lung, and Blood InstituteのGary Gibbons博士は述べた。「さらに研究を行うことで、この効果を一層拡大することができると同時に、研究所見を迅速に臨床に反映させるためのロードマップが示される」

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