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2023年07月26日

CCR5変異を伴わないドナーからの幹細胞移植後にHIV感染症が治癒したと考えられる最初の症例
First possible HIV cure after stem cell transplant without CCR5 mutation

写真
Geneva, Switzerland. olrat/Shutterstock.com

「Genevaの患者」と呼ばれる男性は、がん治療として幹細胞移植後、HIV感染症が治癒した最新の症例になったとみられる。以前の報告症例とは異なり、この男性はCCR5変異を有さないドナーから幹細胞移植を受けた。

これらの研究結果は、今週オーストラリアのBrisbaneで開催されたIAS 2023で発表された。

この男性は50代前半で、1990年にHIV感染と診断され、2005年から抗レトロウイルス療法(ART)を受けていた。彼はまれで侵攻性の高いがんを発症し、化学療法と全身放射線療法を受けた。2018年には幹細胞移植を受けた。

HIV感染症が治癒した過去の症例では、あるまれな遺伝子変異(CCR5-デルタ-32として知られる)を有するドナーからの幹細胞移植が行われていた。この変異があるとT細胞上のCCR5コレセプターが欠損し、HIVの細胞侵入を妨げる。今回の症例では、この変異を有する適合するドナーが見つからなかった。

幹細胞移植は成功したが、男性は急性および慢性の移植片対宿主病を発症し、ルキソリチニブを含む免疫抑制剤による治療を受けた。移植から3年後の2021年11月、注意深い監視下でARTの中断を開始した。

この男性は、ARTの中断から20ヵ月経過後も標準的検査でHIVが検出限界値未満を維持しており、超高感度の検査でも陰性となっている。

幹細胞移植は、生命を脅かすがん治療のために移植を必要とするような状況にない人々にとってはリスクが大きすぎるうえ、集中的でコストのかかる手技である。それでもなお、新たな治癒症例が報告されるたび、HIV治癒の研究に取り組む研究者らにさらなる手がかりを提供する。

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